本記事では「三井不動産の株主優待の魅力はもちろん、三井不動産は投資先としてどうなのか」を投資力8年の筆者が解説します。
三井不動産の株主優待を知る「2つの特徴」
三井不動産の株主優待「2つの特徴」
三井ショッピングパークポイントがもらえる
長期継続保有でポイント還元が最大3倍に
その1:三井ショッピングパークポイントがもらえる
三井不動産の株主優待では、三井ショッピングパークポイントがもらえます。
三井ショッピングパークポイントとは、ららぽーとや三井アウトレットで使えるポイントのことですね。
100株保有につき1000ポイントが付与され、最大は1,200株の保有で12,000ポイントです。
三井不動産の株主優待は、ららぽーとや三井アウトレットに入っている色んな店舗で使えるため、株主優待としての使い勝手の良さはトップクラスと言えるでしょう。
その2:長期継続保有でポイント還元が最大3倍に
三井不動産の株式を長期保有すると、3年目に2倍、5年目に3倍の三井ショッピングパークポイントが貰えます。
具体的には、100株を継続保有すると3年目に2,000ポイント、5年目に3,000ポイントの拡充となります。
1年目:1000ポイント
2年目:1000ポイント
3年目:2000ポイント
4年目:1000ポイント
5年目:3000ポイント
6年目以降:1000ポイント
三井不動産の株主優待が一般的な優待拡充と少し違うところは、ポイントの拡充を受けられるのは3年目と5年目だけということです。
例えば、1200株を保有していた場合だと1年目と2年目は12,000ポイントがもらえ、3年目は24,000ポイントに増額され、4年目は12,000ポイントに戻り、5年目になると36,000ポイントに増額されます。
今後、株主優待の内容が変更される可能性もありますが、もし10年近く継続保有しても還元額が1年目と同じというのは、長期投資家にとっては少し残念ですよね。
三井不動産に投資した「5つの理由」
次に僕が三井不動産に投資した理由を5つ紹介します。
三井不動産に投資した5つの理由
累進配当の導入&株主優待の新設
株主優待の使い勝手が抜群に良い
政策保有株式の売却資金で大規模な自社株買い
保有する賃貸等不動産に膨大な含み益がある
インフレでは不動産価格が値上がりし易い
ちなみに僕は三井不動産の株式を取得単価1,546円で1,200株保有しています。
本記事の内容は、僕が投資判断を下した理由(記録)であり、投資助言や投資推奨などの意図は一切ありません。そのため、投資判断はご自身で下すようにしてください。
その1:累進配当の導入&株主優待の新設
三井不動産に投資した1つ目の理由は、累進配当の導入&株主優待の新設があったからです。
三井不動産は2030年に向けた長期経営方針「INNOVATION 2030」の中で、配当性向35%とした累進配当の導入を発表しました。
同時に株主優待の新設も発表しており、それが先にも紹介した三井ショッピングパークポイント(100株につき1000ポイント)です。
三井不動産の配当金は2022年度以降から増加ペースが加速していたため、以前から注目していた銘柄でした。そこに累進配当の導入と株主優待の新設が加わったことで、投資に至りました。
その2:株主優待の使い勝手が抜群に良い
三井不動産に投資した2つ目の理由は、株主優待の使い勝手が抜群に良いです。
三井不動産の株主優待でもらえる三井ショッピングパークポイントは、三井不動産が運営するららぽーとや三井アウトレットに入っている店舗で使うことができます。
例えば、服や靴、カバン、帽子、家電、子供のおもちゃ、飲食店など、株主優待の利用先が非常に豊富なんですよね。
改めて言うまでもなく、基本的に株主優待は毎年同じものが届くことが多いので、株主優待を毎年もらっていると少しずつ飽きてくるんですよね。
だけど三井不動産の三井ショッピングパークポイントだと利用先の店舗が豊富にあるため、その時に必要なものを選んで購入できるので非常に魅力的です。
その3:政策保有株式の売却資金で大規模な自社株買い
三井不動産に投資した3つ目の理由は、政策保有株式の売却資金で大規模な自社株買いが期待できるからです。
少し補足すると、アクティビストであるエリオットが三井不動産の株式を取得しており、資本効率改善を目的に投資方針の変更を求めています。
具体的には、三井不動産が大量に保有しているオリエンタルランドの株式を売却し、その売却資金をもとに1兆円規模の自社株買いを要求していると言う内容です。
このエリオットは過去に東芝やソフトバンクグループ、大日本印刷などの株式も取得しており、その後経営改善を求めてきた実績があります。
三井不動産とオリエンタルランドの取引は局所的にとどまっていることに加え、株式持ち合いを解消する流れが増えていることもあり、政策保有株式を売却した資金で自社株買いが実行されるのではないかと僕は考えています。
三井不、オリエンタルランドとの「縁切り」の焦点 物言う株主が政策保有株の売却を要請 | 金融業界 | 東洋経済オンライン
その4:保有する賃貸等不動産に膨大な含み益がある
三井不動産に投資した4つ目の理由は、保有する賃貸等不動産に膨大な含み益があるからです。
解説を進める前提として、三井不動産は2023年時点で約3.4兆円もの賃貸等不動産を保有しており、その不動産には約3.2兆円もの含み益があります。
三井不動産のPBRは1.3倍前後(2024年8月時点の株価1500円を元に算出)ですが、上記の賃貸と不動産の膨大な含み益を考慮した実質PBRは0.7倍前後と驚くほど割安水準になります。
このようにPBRと実質PBRが大きく乖離する理由は、PBRの計算に使う純資産は簿価を使っており、賃貸等不動産の含み益は簿価に含まれていないからです。
ちなみに実質PBRが割安な銘柄は、不動産や倉庫のセクターに多いです。例えば、不動産セクターだと住友不動産や、東京建物、三菱地所、京阪新ビルディング、東急不動産などが挙げられます。
倉庫セクターだと、安田倉庫や渋沢倉庫、三菱倉庫、三井倉庫などが挙げられます。
このように莫大な含み益がある。賃貸等不動産を売却し、その売却益を使った株主還元や再投資を行うことで、企業のさらなる成長に期待できます。
その5:インフレ経済では不動産価格が値上がりし易い
三井不動産に投資した5つ目の理由は、インフレ経済では不動産価格が値上がりし易いからです。
こちらも前提として、日本では年間2〜3%でインフレが継続しています。このようにインフレが続く国では、株式や不動産などの価格が上昇しやすくなります。
参考までに不動産関連のデータをいくつか紹介すると、2024年の公示地価では全用途の全国平均が前年比2.3%上昇しており、この伸び率はバブル期以来33年ぶりの高さでした。
2024年の路線価も全国平均で前年比2.3%上昇しており、これは2010年以来で最大の上昇率です。つまり日本の土地価格が数十年ぶりの上昇率を記録しています。
また、東京都心のオフィス空室率も徐々に低下(24年5月で空室率5.48%)しており、この空室率が5%を下回るとオフィス賃料の値上げを行いやすくなるため、大手不動産デベロッパーの収益アップにつながります。
他にも複数のデータを見る限り日本経済のインフレは続く可能性が高く、このような外部環境では不動産価格の上昇に期待できます。不動産価格が上昇することで三井不動産が保有する賃貸等不動産の含み益もさらに押上げられ、純資産の拡大が株価上昇要因になると考えています。
三井不動産に投資する前に知りたい「4つの懸念」
次に三井不動産に投資する前に知っておきたい懸念を4つ紹介します。
三井不動産に投資する「4つの懸念」
日銀の利上げは不動産セクターに逆風
指数をアンダーパフォームする可能性が高い
日本の人口減少トレンドは長期的に逆風
総合利回りは2.6%とそれほど高くない
その1:日銀の利上げは不動産セクターに逆風
三井不動産に投資する前に知っておきたい1つ目の懸念は、日銀の利上げは不動産セクターに逆風です。
日本銀行は2024年にマイナス金利を解除し、その後も過度な金融緩和を解除するために利上げに動いています。
金利上昇は不動産セクターにとってマイナスで、業績の収益が悪化する要因の1つにもなりますし、外部環境の悪化を意識した投資家からの資金が流入しにくくもなります。
日本銀行が政策金利をどれくらいの期間をかけて、何%まで引き上げるのかは現時点では不明です。ですが、不動産業にとって追い風だった大規模な金融緩和が終了した事は間違いありません。
その2:指数をアンダーパフォームする可能性が高い
三井不動産に投資する前に知っておきたい2つ目の懸念は、指数をアンダーパフォームする可能性が高いです。
その理由は、三井不動産は時価総額が約4兆円と規模が大きいことと、日本での不動産投資は急激な成長が見込めないからです。
例えば、2014年以降で日経平均株価と三井不動産のパフォーマンスを比較すると下記の通りです。
日経平均株価:
三井不動産:
2014年以降の株価騰落率で比較したところ、三井不動産のパフォーマンスが日経平均株価に大きく劣後する結果となりました。
ですが、株価のパフォーマンスは、どこの期間を切り取るかによっても結果が大きく異なります。また、過去のパフォーマンスが将来のパフォーマンスを決めるわけでもありません。
先に紹介した三井不動産に投資した5つの理由にも挙げたように、日本の土地価格がバブル以来の上昇率であったり、アクティビストの株式取得によって三井不動産の株主還元姿勢に変化が見られたりと、複数のプラス材料が重なっています。
今の外部環境が続く限りは、ここ数年間は三井不動産が日経平均株価をアウトパフォームすると個人的には考えています。
その3:日本の人口減少トレンドは長期的に逆風
三井不動産に投資する前に知っておきたい3つ目の懸念は、日本の人口減少トレンドは長期的に逆風です。
これは誰もが知っている通りで、日本の人口は減少傾向にあります。人が減るという事は必要な不動産も減るため、不動産価格も下がりやすくなります。
ですが、現状は日本の人口減少と不動産価格が連動していません。これには複数の理由があって、少人数世帯の増加や外国人投資家による不動産の購入などによって不動産価格が上昇してきたためです。
つまり、日本の人口減少は不動産価格のマイナス材料になる一方で、それ以上に大きなプラス材料があったことでこれまでは不動産価格が上昇し続けてきました。
とは言え、今後は日本の人口が減り続ける事はほぼ間違いないので、不動産業界にとって逆風になる事は間違いないでしょう。
その4:総合利回りは2.6%とそれほど高くない
三井不動産に投資する前に知っておきたい4つ目の懸念は、総合利回りは2.6%とそれほど高くないです。
総合利回り2.6%とは、下記の条件をもとに計算しています。
株価:1500円
DPS(1株配当金):30円
株主優待:1000円相当
例えば、商社株や銀行株、通信株などに投資すれば配当利回りだけでも3〜4%が狙えます。
そのため配当金や株主優待を目的とした投資を行う人であれば、三井不動産よりも他の銘柄に投資した方が良い結果が得られるかもしれません。
三井不動産の株主優待「3つの注意点」
最後に三井不動産の株主優待における注意点を3つ紹介します。
三井不動産の株主優待「3つの注意点」
長期継続保有での優待拡充は3年目と5年目だけ
株主優待を貰うには半年または1年の継続保有が必要
株主優待は1,200株で12,000Pが上限
既に本記事で紹介済みの内容も含みますが、投資するにあたって非常に重要な内容なのでリマインドとして紹介しておきます。
その1:長期継続保有での優待拡充は3年目と5年目だけ
三井不動産の株主優待における1つ目の注意点は、長期継続保有での優待拡充は3年目と5年目だけです。
三井不動産の株式100株を長期で保有した場合、株主優待でもらえるポイント数は下記の通りです。
1年目:1000ポイント
2年目:1000ポイント
3年目:2000ポイント
4年目:1000ポイント
5年目:3000ポイント
6年目以降:1000ポイント
一般的に、継続保有による株主優待の拡充では「×年以上継続保有すると、それ以降は拡充された株主優待がずっと貰える」というケースが多いため、勘違いしないように注意しましょう。
個人的には、三井不動産の株式を長期で保有する予定のため、6年目以降は株主優待の拡充を受けられないのは非常に残念です。
その2:株主優待を貰うには半年または1年の継続保有が必要
三井不動産の株主優待における2つ目の注意点は、株主優待を貰うには半年または1年の継続保有が必要です。
株主優待をもらえるのは、100回以上を長期保有した投資家のみです。
2025年3月末の権利落ちで株主優待を取得したい人は、半年以上の継続保有が必要です。具体的には、2024年9月末の権利落ちを100株以上保有してまたぎ、さらに継続保有して2025年3月末の権利落ちをまたぐ必要があります。(同じ株主番号で権利落ちを2回またぐ)
2026年3月末の権利落ちで株主優待を取得したい人は、1年以上の継続保有が必要です。具体的には、合計で3回の権利落ちをまたぐ必要があり、1回目が2025年3月、2回目が2025年9月、3回目が2026年3月になります。
そのため三井不動産の株主優待が欲しいからと言って、3月の権利落ち直前に株式を購入しても株主優待をもらう事はできません。長期保有が前提となることに注意しましょう。
その3:株主優待は1,200株で12,000Pが上限
三井不動産の株主優待における3つ目の注意点は、株主優待は1,200株で12,000Pが上限です。
三井不動産の株主優待は保有株数100株ごとに1000ポイントの三井アウトレットパークポイントがもらえますが、上記の上限があることに注意しておきましょう。